篤姫

第七回父の涙
『こんばんは、尚五郎です。
姫がついに本家に養女に入ってしまいました。
思えばなんであんな女を…おっと、姫様をお慕いして
いたのだろうか、菊本さまのことだって、女の道の忠義を
示したというのに、なんだかグズグズ言ってるので、
心を鬼にして「どれだけ自分が可愛いんだよ。お前のせいだよ
。むしろ俺に振り向けよ、この人の心のわからん鈍感女」を
変換して、ソフトに言ったのに「尚五郎さんでも怒ることが
あるのね」とかおっしゃるし。
しかしそんな姫様にメロメロになってしまう自分が嫌だ。どれだけ
なんだ。姫様は本当に人のお心がわかってらっしゃらないんだから…。
養女に入る時だってそうだ、前の日お訪ねしたとき、お守りを交換く
ださるとかいって私を喜ばせたのもつかのま
「異国では友と大事なものを交換するのです」と。と、友ですか。
私は。ホント人のお心がわからないんだから。姫のお父上の表情とか
兄上の表情をみてもなんにも感じないんだろうな、だから姫なんて
大、大、大、大、大好きだー(泣)』
ところで、菊本の遺言父上は本当に燃やしちゃったわけですか?
最後に出すと思ったのに…。しかし、菊本は悲しい。自分の存在を
消さなければいけないという発想と、それが受け入れられる薩摩の
当時の風土が…。