明覚駅

途中下車。
何か目的があるわけでなく、ただ
何か降りたい気分になって降りる。
これは中々贅沢な楽しみ方といえる。
日ごろ時間やスケジュールに追われて
いればそのようなこともできないし。
今回の明覚駅は八高線の一駅である。
八高線というのは文字通りの八すなわち
八王子と高すなわち高崎を結ぶ路線なの
だが、今や電化されて川越線とペアを組ん
でいる、高麗川-八王子の所謂八高南線
高麗川から高崎*1で非電化ローカルな
八高北線とに分断されている。
明覚は北線の方にあるのだが、この北線は
一時間に一本あるかないかぐらいの本数
なので、途中下車というのは結構それだけ
時間を取られるということになる。
何故この駅に降り立ったかといえば、この駅
舎が気になったから。

中々面白い形でしょ。駅前の桜とともに車窓か
ら気になったので降りたわけだけど、意外と桜
の本数は少なかった。
駅舎の中はこんな感じで天井が高い。

駅前はこれといって何かがあるわけじゃなく、
この駅の所在地ときがわ町の中心からも少し
外れている。
しかし、まあせっかくだから街へ向かって歩いて
いくと、蔵のあるような大きな家が思いの他多い。
街灯の下には「木のむら」との文字が。
後で調べたところ、この町は木工の町だそうで
物産館とかもあるらしい。なるほど、それで駅舎も
木で作ったログハウス風なんだな。
ただ、私が歩いていったのはその物産館とは逆の
方向だったようだ。残念。だがこういう後々の発見
も、行き当たりばったりの途中下車の楽しさである。
桜の木は意外と少なく、ちょっと雰囲気のある
川の景観にも桜の花の彩はなかった。

小一時間駅の周りを歩き、最早貴重になってきた
ナショナルのロゴの残る電器屋さんを見つけたり

しながら駅に戻る。
ホームで待つよりもと跨線橋を登り山からの空気を
感じながら、対向列車を待つ。
暖かくなってきたとはいえ、夕方はまだ冷える。
しばらくすると向こうから列車が。

この線は単線、つまり、すれ違うために、駅で
しばらく対向側を待つのだ。私が乗ろうとする高
麗川行はどうやら遅れている模様。
普段なら夕方でイライラする遅れも、旅人であ
るときは滞在時間を延ばしてくれる、ラッキーな
出来事に思える。夕闇の近づく町。明日は変わら
ずやってくるというのがもしかしたら危ういのかもと
いうのを震災などでヒシヒシと感じるのだが、こうい
うノンビリした風景に出会うと、明日もまたやってくる
んだなと安心感を覚える。
つかのまの優しさを夕方の駅は語りかけてくれる。

*1:正式には倉賀野