第七回ペット・サウンズ

ペット・サウンズ

ペット・サウンズ

天の声(以下T):世の中広いよなぁ…色々な人がいるよな。
私(以下I):どうしたんですか、いつになく物憂げな表情ですね。
T:いやあ、30代中盤でメイドのコスプレして似合う人とか、銀行員なのに樋口一葉
ってちゃんと言えない人とか、ドッグフードを「薄味で美味しい」っていう人がいるん
だよな。
I:全て同一人物な気がするのですが、
気のせいですか?
T:ドッグ・フードで思い出したのがこのペット・サウンズだな
I:ああ、「こんなの聴くのは犬じゃね?」っていう
例のマイク・ラブ発言ですね。
このアルバムでイニシアチブを取ったブライアン・ウイルソンの冒険の結果がそれ
ですもんね。本当の敵はうちの中にいるとはよくいったものですね。メンバーに
言われるとは…
T:なんか使用法がおかしくないか?
I:細かいことは気にせずに。さてこれは66年のビーチボーイズ(以下BB5)の作品で、
ロック史上にも影響の大きいアルバムです。ビートルズのサージェントはここから生ま
れたとも言われてますしね。
T:うーん、でもなあ。BB5はやっぱり太陽と車とサーフィン。夏のイメージなんだが
なあ。どう聞いてもそれとこのアルバムが一致せん。
I:確かに、私が初めて聞いたときもなんか不気味さを感じましたよね。Wold’t It Be
Niceのメロの入りの奇妙さが耐えられず。それはラジオ番組だったのですが、そこで
DJが「これはポール・マッカートニーも非常に好きな曲だと押している曲です」なん
てのを聴いてますます鬱になったんですよ。あーポール様に近づけないと。。
さらにはGod OnlyKnowsのあのオルガン的なものからなんか宗教方向に引っ張られ
る、やはり不安感が強くて、中々入り込めませんでした。というか、それを知った
時はこの二曲とCaroline Noぐらいだったので、アルバムは
スルー
しました。
T:また、もったいないことを。お前はホント頭が固いな。
I:そう、しかしそれから5年ぐらい時が経ってあまりにもペット・サウンズがいいという
ことで再度聴いたらこれが、もうナミダなしには聴けない。不安にどうあがくのか、
運勢をゆだねるのか、また違う道を行くのか?多分どれにもたどりつかない答えのない
混沌を定義しているのがこのアルバムの最大の特徴ではなかろうかと。
私からするとこのアルバムのコーラスの綺麗さや録音の凝り方には敬意を払わずには
おられませんが、では、アルバムでどうなのか?ということになるとまだ謎がそのま
ま残っている。
居心地がいいはずなのに後味が
悪い

というのがこれの魅力と今はその辺りにまでしか到達していません。
あと二〇年経つとかわるのか?永遠にブライアンは青年のままでそれを、爺さんに
なったオレに対してもつつんでくれそうな、そんな暖かさは感じますね。
T:俺はそんな小難しいことよりも
「カリフォルニアの女はみんな
オレのもの」
の方が好きだがな。
I:ちょっとこのアルバムで浮いて見えるSloop John Bが一番一般的なBB5に近い
イメージですものね。
T:そうだな、お前は俺を尊敬してないようだが世間は俺を尊敬してるということ
だな。
I:そのポジティブシンキングが全く冒頭の魔女とそっくりだな。見習いたいわ。
T:なんか言った?キャハ
I:……