坂の上の雲

ふたたび二話分です。
第八回日露開戦
いよいよ日露間の関係が緊迫するなか
それぞれが国であり家族を守る、ああ美しき
人々。なんて見られないのだ。
その苦悩の上に国家や私たちの生活が
成り立っている、ひいては今につながって
いることはある側面では疑いの無いところ
なのであるが、こういう場面は見ていて
とても辛い。みんなご立派なのだ。
例えばここぞという時に司令官をはずされる
日高。自分を否定されながらも最後には冷静
に山本の論に諭される。秋山一家の「滅しても
怨みなし」というのも真之が誤魔化しはしたが
多分あの言葉は家族が感じているだろう。
ロシアの皇帝ニコライも明治天皇もそれぞれ
が立場によって悩んでいる。
無謀なのに戦うというのはおかしなことなの
に、それでも尚策を練る伊藤にしたって出来る
限り、いやみんなそれ以上のことをやっている。
そこがなんとも苦しいのだ。
心情が細やかで、それだけ完成度が高いドラマ
であるということなのだろう。
そんな中単純に己の権力だけを貪り食うこと
に没頭していたザ・悪役アレクセーエフはある
意味ホッとした。
第九回広瀬死す
ついに日露が開戦。しかしロシア側はあくまでも
格下の日本など相手にしない。皇帝の気まぐれ
で、一度は朝鮮は渡すといいながらも、結局朕の
ヤロウは「黄色いサル」としかみていない。
それはロシア軍とて同じこと。いつのまにかタケオ
大好きになっていたあのボリスが「日本はヤバイ
よ、旅順の日本人も逃げてるし」と言ったって、
ほとんどが聞く耳をもたない。
しかしながらその油断交じりで迎えた開戦の奇
襲も彼我の差は歴然。日本は相当好条件も
うまくいかない。そりゃあロシアも舐めるよね。
その中で真之さんは、策をめぐらすのだが彼の
「兵は一人も殺さない」というヒューマニズム
ふれているが、消極的な案はさすがの東郷閣下
でも通さず、有馬の閉塞作戦が取られる。
ただ、有馬って兄さんも口先だけでなく自分で
出撃しちゃうってのが一味違う。そしてその作戦
に参加したのが、広瀬である。彼はいつでも男
らしい。多分私の駄文を読んでいる方はわかると
思うが、私は命令をされることは嫌いだ。するのも
嫌いだ。だからというか、広瀬のような人は多分現
実世界では会いたくない人物であるだ。とはいえ、
それ言い出したら好古アニイなんてすごく
嫌いになるわけだが(笑)。
まそれはさておき、その広瀬はその初めの旅順
閉塞作戦に参加、失敗には終わるが、もう一度
行く気がマンマンである。その作戦が失敗したの
は安全を考え夜にと考案したお前のせいだと有馬
に言われしょぼくれていた真之だが、この広瀬に
悩むなと言われる。ああ、男らしい。程なく第二次の
旅順閉塞作戦が行われるが、敵にはやっかいなヒゲ
じじいが加わったために、さすがの広瀬も苦戦。
睾丸を握れとこれまたすさまじい命令を出したりして
奮闘する(違)も作戦は失敗に終わり、しかも一人杉野
という兵隊を見つけ出せず、泣く泣く逃げるはめに。
それでもなお、ロシアとの架け橋になりたがった彼は
行きようと必死。一緒の兵たちも又必死。しかしその
タケオに訪れたのは死。彼を打ち抜いたのは、彼が
愛してやまなかったロシアの海軍だったはずだ。
戦争はなんであれ死を誘発するものであるが、悲し
い。私は広瀬が嫌いだと書いたが、やっぱり好き
なのかもしれない。一体国家という見えないものの
ためにどれだけの命が散るのか。しかもそれは別段
悪いことではないという世界。これはいさぎよい世界
ではあるのだが、やはり私には肌が合わない。もちろ
んこのドラマの中だけで見るのは違ったものであるし
坂の上の雲は好きな作品なのだが。良作であれば
あるほど、色んな意味の切なさもますなあ。