長谷川等伯展

春の陽気に誘われてっていうこともないのだが、
東京国立博物館等伯を見に行った。上野の山
ってのは久々だ。御徒町よりのつまり丸井がある
方やら、広小路方面やら、アトレやらはたまに行く
のだが、山側にはあまり出ない。国立博物館
博物館ゾーンの奥にあるのだが、科学博物館の
クジラとD51には後ろ髪をひかれる。今日の目的は
長谷川等伯であるので、華麗にスルーし、奥へ。
ん、90分待ちかあ。行列するのは嫌いだが*1
並ぶ、ふふ、こちらはWalkmanがある。そろそろ
買い替えたいが、いかんせん、一杯入り過ぎてるし
なあ、まあいいか、聴く、あれ、なんかいやなピー
って音が……。充電切れかよ!しまったこんなこと
ならきっちり充電をしてくれば…まだ残り85分ぐら
いあるぞ、くそうメェ!
平日ってこともあるが、ちょっとお年を召した方が
多い、「老人が多いんだからもうちょっと案内の文
字を大きくして欲しいよな」「学芸員も若いから気
づかないんだよ」なんて会話が耳に入る。
更には手をつないで並んでいるご婦人たち。はあ、
いくつになっても女子ってやつはなんでこう群れた
がるんだ。「外にいる方が見学よりも長いんじゃな
い」、この会話には、うんそうだよ、もっと言って
やれ!と同感。
結局90分は待たずにすんだが、まあ80分後ぐらいに
ようやく入館。こりゃ本当に見学時間の方が短いぞ。
2会場に別れていたが、「空いているほうへ」のア
ナウンスに従う。俺って素直だから(笑)
こちらは晩年の水墨画を中心とした世界が展示してある。
登場してくる人物が老人と子どもばかりなのが興味深い。
「普通の大人は何か穢れるんだろうか」と多分ピント
ずれな感想が浮かぶ。ベテラン鑑賞者たちは口々に
「うーんこの筆遣いの細かさが」とか、聞きなれない美
術用語らしきことも言っているがこちとらさっぱり(笑)。
でも墨の濃淡のみで、細かく立体的に描いたその絵は感
動に価する。何も書いていない「もや」の表現などはす
ごいものである。さらにいえば鋭角の木々や岩。これが
力強さを強調し、薄い柔らかさと対象的な画をみせてく
れる。
「竹林猿猴図屏風」の猿の毛の質感は遠くから見ても
インパクトが強いし、「烏鷺図屏風」の白と黒のコント
ラストは鮮やかである。ふだんニクッタラシイカラスが
こんな綺麗でいいのか(笑)なんて。しかし、とどめは
彼の代表作である「松林図屏風」だろう。
この立体感と繊細さたるや、もう言葉がない。
カタログとかの写真では、なんだか地味な感じしか受け
ないが、実物は全く印象が違う。空気が描かれているの
だ。あのジメジメと不安としかし幻想的な不思議な雰囲
気が視覚だけじゃないなにかに訴えるものがある。
その後第一会場で色鮮やかなものを戻って見たがこちら
の第二会場の方が私は好きだ。もう一回その後で第二会場
を見たもの。
そりゃあ第一会場の「楓図貼付」や「松に秋草図屏風」の
大胆な構図も感嘆するが、なぜ、墨の色のみであんな力が
生み出せるのか、不思議だ。90分並んだかいというのは充
分あった。

*1:好きなやつはおらんが