第九回チープ・スリル

チープ・スリル

チープ・スリル

天の声(以下T):アメリカン・スプレンダーってアメコミを知ってるか?
私(以下I):ええ。知人に借りて読んだことがあります。ジャズのレコード探しま
くったりとか、仕事の愚痴やら、いい加減な女性関係やらもう愛すべきダメな
ヤツの話ですよね。共感するします(笑)
T:そこででてくる有名になった友人が
一緒に:ロバート・クラム
I:彼のイラストをジャケットに使ったのがこのチープ・スリルですね。
T:ジャケを見るとものすごく楽しそうな、浮き浮き感があるよな。
I:確かに。でも中身はまるで違う(笑)。
ただ、このクラムのイラストといい、このアルバムの音がいい意味でカウンター
カルチャーの味を出してますよね。ロック、まあジャズもそうなんでしょうけど、
決して健全な娯楽とは言いかねるという、その魅力も現しているわけです。
T:まあ、しかしこのバンドBig Brother & the Holeding Companyは、このバンド名
より、ジャニスの付録扱いで呼ばれることが少なくない悲運なバンドだよな。
I:まあジャニスに全部持っていかれて、その上このアルバムで彼女に抜けられて
しまうわけですからね。このアルバムは68年に発売されたアルバムです。まあ
ジャニス・ジョプリンの苦しく、まさに命を削ってそれでいて、それを楽しむような
なんとも異様なそれでいて引き込まれる恐るべきアルバムです。
T:あんなサマー・タイムだもんな、ガーシュインがああなるか?前回紹介した
ゾンビーズのバージョンと比べても別の曲だよな。
I:Summer Time, Piece of My Heart,Ball and Chainというこの3曲は特に彼女の
代表曲といえるものだと思いますが、Summer Timeなんて子守唄みたいなもの
なのになんでここまで追い詰められた感じになるんでしょうね。サイケデリック
てもっとフワフワして楽しそうに感じるのにどうもアメリカ製のものは暗いんです
よね。
T:暗いのは嫌いか?
I:時と場合によりますが、まあどちらかといえば、ペシミスト的なところがある私は
わざわざ暗いものを体験したくないってとこがありますよ。
T:今回はちっともお笑い要素がないものなあ。
I:いやあ、ジャニスの前には笑いはどうも消えてしまいます。でも、このアルバム
の迫力は決して嫌いではありません。
T:まあ、こういう回もたまにはいいだろう、次でラストだけどな。