天地人

第10回二人の養子
わしの名は樋口惣右衛門
これまでの人生耐え忍んできた。
やれ金勘定しかできんだの、成り上がり
ものだの散々だった。
それでもよいと思っていた。
息子はわしに似ないで立派に成長
したし、将来安泰じゃとも思っていた。
しかし、時代は皮肉なもの。
謙信公もなくなり、わが最愛の妻も
この世を去った。
息子は思ったよりは臆病で人殺しはできん
ようだ。
わしの人生もこれまでかもしれん。
まあ、これでダメでも農業でもしてのんびり
暮らすとしよう。
思えば謙信公は二次元マニアだった*1
わしも妻の手前おおっぴらにはできなかったが
謙信公はご立派に最後まで「二次元」の道を通し
「三次元」には一切目もくれなかったそうじゃ。
さすが、わが主、わが師匠。
あの本丸の金庫の中にはわしと謙信公で
集めた「もえのまき」全集が。とくに「忍者初音」
シリーズはコスプレイヤーまで出たらしいからな。
っけ、信長と言う男は二次元を三次元化するなどなにも
わかちゃおらん。
…ん、あ、やばい、本丸を抑えねば、わしの
「もえのまき」が!「初音たん」が!謙信公と一緒に
揃えた全集が他のものに奪われてしまう。
いかん、ここは人生最大に頭を使うのだ。
うーむ、そうじゃ兼続と与七。
若い者は「影虎様が謀反をおこすぞ」とでも言って
おけば、血気にはやるだろう。
アイツはヘタレかもしれんが、わしに似て知恵ぐらい
はあるだろう。とりあえず兼続らに抑えさせておけば
後はどうにでもごまかせる。
若殿もどうやらオタクの才があるのはわかっているので
わしのコレクションをちょっとわければ心配なかろう。
さあ、がんばれ、わし。

*1:おいおい