今日の一枚「ピチカート・ファイヴ/Pizzicato Five TYO」

ピチカート・ファイヴ TYO

ピチカート・ファイヴ TYO

未知へのあこがれ、新しい文化への希望。
そんなものが日常茶飯事に転がっていたかのように
錯覚、想像されるのが50、60年代のアメリカで
ある。
音楽にしても当然そうで、世界中がアメリカのポッ
プスに夢中になった。
それらは、使い捨てであり、非現実でもあり、作ら
れた「イミテーション」という面も強い。
ただ、人間はどこかその夢見る嘘っぱちの世界にあこ
がれてやまないものでもある*1
さて、今日の一枚はピチカート・ファイヴ野宮真貴
ボーカル初期のベスト盤。
彼らのサウンドはその夢のオールディーズ・ポップス
の持つ憧れや現実に近そうな非現実といった「イミテ
ーション」の一番美味しい所を抽出してから手を加えた
たつきのない歯切れの良さとふわふわ感が売りである。
また、古い楽曲の引用の仕方が実に面白い。
ビートルズを持ってくるのに、マージー系掛け合い
コーラスでもバラードでもなく、サイケ。
その上サイケでも「苺畑」や「セイウチ」といった
定番ではなく、「リッチマン」を使うところが彼らら
しいコダワリであろう。
完成した料理名は「マジック・カーペット・ライド」。
その題名はステッペン・ウルフ*2から拝借していると
思われる。
ビートルズについては「万事快調」でも「Drive My
Car」のBeep Beep Beep Beep Yeah!も引用。
そういや「東京は夜の7時」にはストーンズのYeah!
Yeah!Yeah!Hoo!!が出てくる。
また、このアルバム中唯一小西作品でない「トゥイギー
トゥイギー」*3は「ネコと一緒に」という暗示もあるが、
オルガン・ジャズの佳曲ジミー・スミスの「The Cat」
をうまく調味料に加えている。
「スウィート・ソウル・レヴュー」のソウル感覚は
ゲンスブールの「クーラーカフェ」の「黒人っぽい
コーラスを白人に歌わせた」という方法論に近い
しょうゆ味のソウル。野宮真貴の「スウィート」
「キャッチー」「ハッピー」「ラッキー」の見事な
日本語イントネーションが素晴らしい!
わざわざ英語発音をしてきた、ロッカー達が間抜けに
思える。

*1:某ネズミー・ワールドの盛況はその象徴であろうし

*2:カナダ出身の60年代のロックバンド、「ワイルドで行こう」が有名

*3:ついでながらトゥイギー(Twiggy)というのはイギリスのモデルさん。60年代ミニスカートブームを起こしたことで有名、この曲は野宮真貴がアイドル時代に出した曲のセルフカバーらしい。